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Case 導入事例
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SCREENホールディングス

現代の「インフラ」として不可欠な半導体の製造装置で世界をリードするSCREEN(スクリーン)ホールディングス(本社・京都市)。
世界中の名だたる半導体メーカーから強固な危機管理体制を求められる同社は、災害時の情報共有システムにTIS株式会社の「Bousaiz(ボウサイズ)」を採用し、さらなる体制強化を図っている。

半導体やフラットパネルディスプレイの製造装置、印刷関連機器の製造で世界を牽引するSCREENホールディングス。

インタビューに答えるSCREENホールディングス 環境安全健康部部長 西原敏明氏

半導体を製造する装置のひとつ、枚葉式洗浄装置の世界シェアは40%でトップを誇る。 約2600億円の売上げのうち約7割を海外が占め、国内外の従業員は5000人を超える。 そのSCREENが災害時のスムーズな情報共有のために採用するのがTIS株式会社のクラウド型危機管理情報共有システムBousaizだ。

SCREENビジネスサポートソリューションズ・環境安全健康部の西原敏明部長はBousaizの導入目的を「災害時の間違った情報伝達が引き起こす混乱を避けるため」と語る。 SCREENホールディングスのBCPは主に同社の環境安全健康部が担当している。

西原氏が情報混乱の一例として挙げたのが、2015年に実施した合同演習で起きたケースだ。 この演習は、京都で震度6弱の地震が発生し京都府内にある本社、洛西事業所、久御山事業所が同時に被災する想定だったが、その演習において負傷者数などの被害状況を把握するのに手間取った。

「人を介した情報の伝言ゲームによる報告では間違いが起こる。Bousaizならシステムとして対応し情報共有できるため、これを防げる。しかも、時系列の掲示版形式で情報が整理されて集約されるため、時間のズレがなくリアルタイムで正確な情報を確認できる」(西原氏)と話す。

他社の情報共有システムと比較しBousaizを選んだ理由の1つは、クラウドサービスにより提供されるため、パソコンやタブレット、スマートフォンから夜間、休日でも時間や場所を選ばず利用できたからだ。クラウドシステムなら被災現場や災害対策本部にいない社員も手元にデバイスさえ持っていればリアルタイムの情報共有が可能になる。

SCREENホールディングス 環境安全健康部 EHSマネジメント課副参事の西司氏

「災害は勤務時間内に起こるとは限らないので、夜間や休日に使えるメリットは大きい。人が原因となって情報がストップすることもなくなり、細かい情報まで把握できるようになった」と環境安全健康部EHSマネジメント課副参事の西司氏は評価する。Bousaizはポータル系のシステムのように過剰な機能がなくシンプルなシステム設計で、控えめのコストも魅力だったと話す。

社内向けにBousaizを説明する際に西原氏が使ったのが、昨年4月の熊本地震での本社対策本部の写真。

熊本地震で、熊本市のグループ会社で半導体製造装置の保守サービスや周辺機器を開発する株式会社SEBACSと、益城町にあるSCREEN熊本がダメージを受けた際に収集した数多くの情報をホワイトボード上に整理。西原氏は数多くの情報が隙間なく書き込まれたホワイトボードがBousaizに取って代わると写真を見せて説明。「これでBousaizの役割をイメージでき、みんなが納得して導入できた」と西原氏は振り返る。

現代のインフラとして不可欠な半導体の製造装置を供給するSCREENには、海外の大手半導体メーカーから厳しい品質管理体制が求められてきた。SCREENの装置や保守パーツの供給が止まると、半導体の生産が停止し世界的な混乱を引き起こすからだ。特に2001年に米国で同時多発テロが起きた後は、その影響を受けた大手の顧客からの要求が変化している。品質監査にディザスターリカバリーが含まれるようになり、事業継続の取り組みが不可欠になった。

このため、2000年代の半ばには半導体事業部が先行してBCPを構築。この体制が現在のホールディングスとしてのBCPにつながっている。

電子業界の世界的CSRアライアンスであるEICC(Electric Industry Code of Conduct)の行動規範に従って行われた監査では、滋賀県にある彦根事業所の工場のドアノブが全てワンアクションで開くタイプに交換された。これは素早い避難のための措置だった。「一例にすぎないが、このレベルの対応が取引条件になっている。こういった監査が定期的に入っているので、弊社の危機管理、BCPは否応なくレベルアップします」と西原氏。SCREENは目標復旧時間を設定しているが、これは東日本大震災のときの要求から導かれたものだ。

SCREENホールディングスのBCPでは、災害が起きると3種類の対策本部が立ち上がる。1つはホールディングスとして災害対応全体を指揮し、管理する「本社災害対策本部」。もう1つは被災拠点で従業員や来客の安否確認、被害状況の確認、救護、二次災害の防止措置など主に初動対応を行う「現地対策本部」。そして事業再開に向けた生産現場の修復や物流、業務システムの再構築などに動き出す「復旧対策本部」だ。この復旧対策本部は中核となる各事業会社に設置される。

災害が起きると、3種類の対策本部が立ち上がる

例えば、彦根事業所が被災すると、本社対策本部と彦根事業所の現地対策本部が立ち上がる。そして彦根事業所内に工場がある半導体機器事業の中核事業会社SCREENセミコンダクターソリューションズと、フラットパネルディスプレイ機器事業の中核事業会社SCREENファインテックソリューションズに復旧対策本部が設置され、そこにそれぞれの子会社と連携して対応する仕組みだ。それぞれの対策本部が事業継続に向け、分担した役割を実行する。だからこそ対策本部間での情報共有と情報連携が重要になる。

現在、各災害対策本部のメンバー約400人がBousaizに登録されている。本社や事業所、事業会社などの所属に沿ってグループ化され、届けるべき人に漏れなく情報が行き渡り、不必要な情報の拡散を防ぐ「情報の共有と統制」がBousaiz内で行われている。

ここで交わされる情報は、現地対策本部なら安否確認、インフラや建屋の被害状況、交通網の被害状況など。各事業会社の復旧対策本部は購買先の被害や生産現場の状況、出荷影響などを入力する。そして、掲示版を通した双方向の情報共有を行う。これら入力された情報をもとに、被害の全体像や対策の進展などを俯瞰して把握できるのがBousaizの強みだ。


SCREENがBousaizの被害状況集計画面にコメントがつくと強調されるようなデザインへの変更 や被害状況の報告をCSV形式で出力する機能を求めたのに対しても、標準機能としての改修を行い改善できたという。

本社と現地対策本部の合同演習(Bousaiz導入前)

SCREENでは、昨年11月からBousaizを使った数多くの演習を行っている。その回数は4ヶ月間で20回を超えた。「とにかく最初は使って慣れるしかない」と西原氏は話す。さらに日常的な連絡手段としてもBousaizを使い、習熟度を高めようとしている。

1月23日から京都や滋賀で雪が降り続き、彦根でも近年まれにみる60cmの積雪を記録したときにも情報伝達にBousaizが使われた。掲示版上に彦根事業所の写真が貼り付けられ、積雪状況などを共有した。「さすがにここまでの積雪だとは思わなかった。うまくBousaizの機能が生かされたケースだと思います」と西氏は明かした。

京都や滋賀で記録的な大雪が降った時も、情報伝達にBousaizが使われた

SCREENホールディングスでは今後も、本社災害対策本部、各拠点の現地対策本部、事業ごとの復旧対策本部で年に1回の個別演習、さらに合同演習も実施する予定だという。「Bousaizが導入されたことで、ウェブ上で完結できる負担の少ない演習が実施できるようになりました。今後も演習で課題を洗い出し、改善を進めていきます」と西原氏は力を込めた。

[協力/提供]リスク対策.com:中澤 幸介