OPEN

Column コラム

Column コラム Column コラム

2016.06.24

緊急時に必要な情報とは?会社でも役立つ!いざという時の組織力が高まる

第2回 災害発生時に必要な情報

では、災害が起きてしまった後はどうでしょうか。今回も、孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」に例えて説明してみましょう。

この場合の「彼」も、災害そのものの脅威です。地震なら、どこでどれだけの揺れを引き起こしたのか、火災などを発生させたのか。今後津波などを引き起こすのか、余震などを引き起こすのか…。

これに対して、「己」とは、災害によって引き起こされた「新しい現実」ということになります。言い換えれば「被災状況」です。
普段の社会状況と災害によって何が変わったのか。例えば○○線で電車が動いていない、○○地区で電気や水が止まっている、○○地区で火災が発生しているなどは、いずれも災害によって引き起こされた新しい現実です。
しかし、大きな災害になれば、その情報は莫大なものになります。○○地区で木が折れた、○○地区で家が壊れた、○○地区でブロック塀の倒壊で人がケガをした。
これらもその近くに住んでいる人にとっては、地域がどういう状況になっているかを知る上で重要な情報ではありますが、遠く離れた場所にある企業にとって重要な情報かといえば、そうとも言えません。
それらの情報をすべて集める労力、あるいはそれらの情報の中から本当に「必要な情報」を選択する労力を考えると、すべての情報を収集するというのは効率的な対応とは言えません。

前回も書きましたが、「主体と目的によって必要となる情報は異なる」ということです。
そのため、災害時にどのような情報が自分にとって、あるいは自社にとって必要になるのかということをあらかじめ整理しておくことが災害時に迅速に動けるようにするためには極めて重要なポイントになります。
また、平時がどのような状況かを正しく理解していないと、災害によってどう変化したのかを把握することはできません。

平常時の安定した状況を「静的情報」とも呼びますが、静的情報が整理できていなければ、災害など緊急時の「動的情報」を把握することはできないということです。
JRや地下鉄など身近な交通状況などは、皆さん平時の状況を改めて調べないまでも感覚として「時間通りに動くことが普通」と認識していますから、災害時にそれが止まっていたら、異常だということに気がつきます。

では見知らぬ土地にいって、交通渋滞を見たら、それが平時のものか、災害や事故によるものなのか見分けがつくでしょうか?
さらに言えば、こうした情報を、誰が、どのような手段で入手するのか、この点まで考えて初めて災害時に必要な情報を使えるようになります。

特に重要になるのが、自分の身の回りに関する状況、まさに「己」の核心となる部分です。自分という個人なら、家、自分の家族、自分の家がある場所に関する情報です。
家の被災状況はどの程度か、水や食料はどの程度あるのか、家族は無事か等々。企業なら自社や支店の社屋、あるいはその周辺、取引先の企業の被災の状況、従業員の状況などさらに範囲は広くなります。

「己」についてもう1つ知っておかなくてはいけないことは、被災状況だけでなく、対応にあたる人員や資機材がどのくらいあるかということです。
いくら自分の被災状況がわかっても、乗り切るためにどれだけ資機材を持っているか、資金を持っているか、人員を持っているかを把握していなければ対応にあたれません。
これらをすべて、被災後に把握することは難しいでしょうから、やはり災害前からの情報の整理が重要になります。

また、災害後は時間の経過とともに、状況が刻々と変化することも考慮しなくてはいけません。
一度情報を収集すればいいのではなく、定期的に情報をブラッシュアップしていく必要があります。