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2016.10.21

緊急時に必要な情報とは?会社でも役立つ!いざという時の組織力が高まる

第5回 森林火災から生まれたICS

Incident Command System の Incidentとは、その言葉通り事故や事件、災害などの事象を指します。「コマンド・システム」は、「管理するための規格」あるいは「枠組み」というような意味です。ハードのイメージを持たれてしまうと、「コンピューターセンター」のようなものを思い浮かべてしまうかもしれませんが、「規格」とか「枠組み」という意味で理解していただければと思います。ちなみに、アメリカでは災害や事故の規模によって、Incident、Emergency、Disaster、Crisisなど言葉を使い分けていますが、ICSのポイントは、災害だけでなく、小さな事故や事件でも、適用が可能ということです。

ICSの開発の経緯は、1970年代まで遡ります。当時、米国カリフォルニア州で発生した森林火災の現場で、組織内外で連携がうまくいかなかったという反省から生まれたものだと言われています。例えば、用語や組織体制、資機材の規格に至るまで、標準化されていないと異なる組織間での連携はうまくいきません。このような反省から1980年代には全米の森林火災の現場で採用されるようになり、1990年代以降は、他の災害やオリンピックのような国際イベントでも採用され、米国ではNIMS(National Incident Management System)という規格によって、全米の州政府、市政府が、このICSを根幹とした災害対策本部を設置することが決められています。

近年では、アメリカだけでなく、イギリス、カナダ、オーストラリアなどでもICSを独自に定めるようになってきており、日本でも内閣府が音頭をとり、ICSなどを参考に、災害対応の標準化に向けた議論を始めております。阪神・淡路大震災では消防車のホースの太さが異なり連結ができなかったなどの問題があり、こうした不具合を消防では早くから解決し、今では緊急消防援助隊など、全国規模での連携活動が実現されるまでにいたりましたが、東日本大震災では、国と都道府県、自治体の連携、あるいは警察と消防、自衛隊の連携など、すべてがうまく機能したわけではなく、今後、首都直下地震や南海トラフ地震などの巨大災害に備えるにあたり、各組織が速やかに連携できるルールづくりが求められているわけです。