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2017.02.21

緊急時に必要な情報とは?会社でも役立つ!いざという時の組織力が高まる

第8回 指揮命令系統の統一(Chain of Command & Unity of Command)/複数組織が関与する現場での統一指揮(Unified Command)

指揮命令系統の統一(Chain of Command & Unity of Command)と複数組織が関与する現場での統一指揮(Unified Command)については、セットで解説した方が理解がしやすいと思います。 ICSでは、指揮系統の原則として、一元指揮(Unity of Command)と統合指揮(Unified Command)という2つの概念があります。

一元指揮は、上司と部下のように縦のラインについてルールを定めており、具体的には、「一人の上司から命令を受ける。それに対して報告するのも一人の上司」という権威の明確な一元制が謳われています。この原則に基づく組織体制を、Chain of Commandと呼んでおり、報告関係を明確にすることで、管理体制の矛盾などによって引き起こされる混乱をなくすことを目的としています。

災害対応に限った話ではなく、日常的な組織運営においても同じでしょう。ある現場のスタッフに、様々な現場の上司が命令したのでは、そのスタッフは何から何をしていいのか分からずパンクしてしまうでしょう。

「そんなことは当たり前」と思われるかもしれませんが、例えば、社長が突然現場に視察に来て、いきなり末端のスタッフに指示をする、なんてことは起き得ますよね。皆さんが末端のスタッフだったらどうしますか?指示されたスタッフは対応せざるを得ないでしょうが、そんなことが大きな混乱を引き起こすきっかけにもなりかねません。福島第一原発事故でこのような事態が起きたことは今更説明するまでもありませんが、これを徹底するには、トップもしっかりとこうしたルールを認識しておく必要があるということです。

もう1つの統合指揮(Unified Command)については、災害対応に係る主要な組織の現場指揮者によるチームワークについてのルールを定めたものです。文化の異なるさまざまな組織を、一貫性を持たせて単一の指揮命令系統のもとに任務を遂行させることを目的としています。

例えば、州の境界をまたいだような災害や、連邦政府と州と地方自治体のように多様な行政レベルが係る場合、あるいは、石油会社や学校など民間産業や公的機関が加わる場合など、それぞれの組織が個々の指揮官のもとで対応にあたったのでは、例えば重複した場所でバラバラに救助・捜索活動を行うなど、効率の良い作業は期待できません。

逆に、これらがあたかも1つの組織として共同で指揮が執れれば、災害対応の目的や優先順位が共有でき、24時間7日間といった具合に作業を引継ぎなら長期間継続できるようになるなどさまざまなメリットが生まれます。

そこで、ICSでは、統合指揮を行う上でのルールとして◇統合指揮に入るメンバーを明確にすること、◇それぞれの管轄や組織にとっての目的と優先順位を明確にすること、◇それぞれの管轄や組織にとっての制限、考慮すべきこと、優先順位についての合意を図ること、◇基本的な組織構造についての合意を得ること、◇最高の資格を持ち、最も受け入れやすい実行部隊の長と副長を任命すること、◇対応のスタート時間とオペレーショナルピリオド(対応期間)を明確にすること、◇組織の構成スタッフ(一般スタッフ、計画担当、ロジスティック担当、ファイナンス担当)を明確にすることなどを決めることを求めています。

2012年にロンドンで開催されたオリンピック運営について取材をしたことがありますが、政府機関ODA(Olympic Delivery Authority:オリンピック運営局)や関連団体であるLOCOG(London Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games:ロンドンオリンピック・パラリンピック組織委員会)など、それぞれが統合指揮のもとで、役割を決めて準備・運営を行っていました。会場が異なったり、競技種目が異なったり、あるいは環境面への配慮や危機対応への配慮など管轄別に管理体制を決めていました。大規模になればなるほど、一定の秩序が必要で、そのルールを定めているのがICSと言えると思います。