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Column コラム

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2017.02.28

緊急時に必要な情報とは⁉会社でも役立つ!いざという時の組織力が高まる

第9回 目標による管理(Management by Objectives)

次に目標による管理(Management by Objectives)ということについて解説します。目標による管理は、ICSの概念の中で、私が最も好きなものの1つです。危機対応に限ったことではなく、経営などでもよく使われている言葉のようです。ウィキペディアにも解説が載っていますが、それによると、「個々の担当者に自らの業務目標を設定、申告させ、その進捗や実行を各人が自ら主体的に管理する手法」とあります。1950年代に米国のピーター・ドラッカーが提唱したと言われています。一人ひとりに対して、いろいろ細かに指示するのではなく、組織と本人の目標がしっかりしていれば主体性が発揮されて結果として大きな成果が得られるということです。

危機対応においては、組織全体の方針のもと、インシデントの状況を評価し、対応するための体制を確立し、適切な戦略・戦術にもとづいて、かつ、インシデントの状況の推移をフォローできるような目標の設定が重要とされています。

目標を設定する上での優先順位は、LIP(Life Safety:生命の安全、Incident stabilization:災害の安定性、Property protection:財産の保護)という順番になります。命を優先するのは当然だと思われるでしょうが、緊急時には、こうした基本がおろそかにされるケースが多いように思います。例えば、企業の不祥事はどうでしょう? 食品の異物混入などで、消費者の人命に関わるような事態であっても、企業の風評などを懸念して記者会見が遅れてしまうケースなどは、その典型です。

ICSでは、効果的な目標を設定するためにSMART(賢いという意味)に掛け合わせて:Specific(特定的)、Measurable(測定可能)、Attainable(達成可能)、Realistic(現実的)、Time sensitive(即自的)であることを求めています。

ただ、ここまで細かく目標を設定していなくても、組織としての「目的」を明確にして共有しておくたけでも、危機対応においては十分に効果があると考えています。災害に限らず、組織内で様々なハプニングが発生したとき、その時々に、上司が対応を指示していたのでは、時間ばかりがかかり、逆に事態は悪化しかねません。ですから、「現場に任せる」ということが重要になると思うのですが、その際、現場がしっかりとした判断ができるようにするためには、組織として物事の目的をしっかり定めることが不可欠になります。一人ひとりが問題に直面した時に、目的に照らし合わせて自らの使命を分析し、行動を決定できるようにするというのがMBOの醍醐味です。