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2017.05.26

緊急時に必要な情報とは?会社でも役立つ!いざという時の組織力が高まる

第15回 情報処理マネジメント(Information and Intelligence Management)

情報処理マネジメント(Information and Intelligence Management)については、情報トリアージと言い換えた方が分かりやすいかもしれません。要は、様々な情報の中から、対応に必要な情報を見つけ出すという情報を見極めるトリアージ活動が必要になるということです。

原文では「危機管理に係る組織は、情報の収集、分析、共有、管理にかかわるプロセスを確立しなくてはいけない」としています。そして、そのプロセスによって、さまざまな情報「information」から、危機対応に必要な重要な情報「intelligence」を導き出すべきだとしています。難しいようですが、日本語ではinformation もintelligenceも「情報」ですが、ICSでは、作戦に必要な情報を、普通の情報と区別してintelligenceという言葉で表現しています。

災害時には情報が足りないこともそうですが、誤報やデマも含め、さまざまな情報が入りすぎてくる特徴があります。それらすべてを信じていたら危機対応が遅れるだけでなく、逆に危険な状況に組織を導きかねません。いかに早くinformationからintelligenceを導きだすのか、そのプロセスが必要だというのです。

では、危機が拡大する中で、いかにinformationからintelligenceを導き出す情報管理の仕組みを構築すればよいのでしょうか?

すでに紹介しましたが、危機対応においてはLIPという順位で優先順位を決定すべきとの原則があります。すなわち、Life Safety(救助・救命)、Incident Stabilization(被害の拡大防止、二次災害の防災)、Property/Environmental Conservation(財産の保護)です。これに基づけば、その局面、局面でどのような情報を優先すべきかは、ある程度理解していただけるかと思います。

東日本大震災で岩手県災害対策本部の医療班の指揮を執った岩手医科大学の秋冨慎司氏は、弊社のインタビューで次のように答えています。

「発災当初は8割以上の情報が誤報です。けれども、その中に本当に対応しなくてはいけないものが隠されています。そして、情報がないことが重要な情報だったりもするのです。日本では、正しい情報が常に入ってくることを前提に災害対応を考えますが、実は情報マネジメントの必要性を理解していない。情報の質、信頼度を精査していないのです」

そして、本当に対応すべき情報を選び出す基準については「信頼度が低くても人命にかかわるような重要なことに対しては対応度をあげないといけない。逆に、信頼度が高くても優先度が低ければ後回しにしなくてはいけない…」と話しています。

これこそLIPに基づく情報(intelligence)の選定方法だと私は思います。では、命に関する情報を優先するだけでいいのでしょうか? いえいえ、そういうわけではありません。重要なのは「必要な情報を導き出すプロセス」です。

2011年11月に危機対応の国際規格であるISO22320(2013年10月にJIS)が発行されましたが、ICSの内容は、このISO22320の中にも色濃く反映されています。今回の「情報処理システム」(Information and Intelligence Management)については、「活動情報」“operational information”という章で解説されています。

そして、operational information(活動情報)については、「計画策定および指示」「収集」「収集処理および操作」「分析および作成」「配信および統合」「評価およびフィードバック」の6つのステップが必要としています。

かなり高度な内容のように感じられますが、簡単に言えば、どのような目的を達成するための情報が必要なのか、その計画を策定し、スタッフに指示をしなくてはいけないということ。その上で、必要と思われる情報を収集し、その情報が果たして、本当に目的を達成する上で役に立つものかどうかを分析し、それを関係者に配信する。例えば時間帯の異なる2つの情報を統合することで、役立つ情報になることもありますし、断片的なものをいかに組み合わせるかといった視点も求められます。いずれにしても配信した後はその情報を評価し、改善していかなくてはならない。この繰り返しをPDCAサイクルとして行うということが書かれています。