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Column コラム

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2017.06.01

緊急時に必要な情報とは?会社でも役立つ!いざという時の組織力が高まる

第16回 説明責任(Accountability)

説明責任(Accountability)は「透明化の確保」とも言い換えることができるでしょう。誰がどのタイミングで災害(対応)現場に入ったのか、どのような対応計画を立てているのか、どのような指揮命令系統になっているのか、資源がどのように管理されているのか、など、これまでに解説してきたICSの各項目が透明性を持って明確に説明できなくてはいけないということです。そのため、ICSでは、さまざまなテンプレート(ひな形)が用意されています。日本の地域防災計画や防災マニュアルでも、もっとテンプレートを多く入れては、と思うのですが…。

人員、資機材の投入(Dispatch/Deployment)

最後は「人員、資機材の投入」(Dispatch/Deployment)について解説したいと思います。 ICSには「人員、資機材は、関係当局から要求があった時、あるいは派遣された時に限って対応しなくてはいけない」と書かれています。

何だか難しい文面ですが、要は、必要な時に必要な人・資機材を、必要な場所に投入できるようにするということ。
これは、イベントの運営を危機対応に例えると、とても身近に、分かりやすく説明することができます。例えば、運営主体社が、必要以上のスタッフや資機材を現場に取り入れてしまうと、現場で混乱を招き、逆に必要な行動に支障をきたすようなことが多々あります。例えば、小さなイベントにも関わらず、たくさんの運営スタッフを動員すると、たいていの場合、やることが無くなったスタッフは受付の近くでぶらぶらし始めて、最悪の場合、そこでおしゃべりをして、入場者の妨げになるようなケースがあります。同様に、無線機などの通信機材を必要数以上に入れると、やはり、どうでもいいようなおしゃべりで無線機を使う人が出てきて、来場者から「うるさい」なんて叱られる始末になるなんてことも…。いずれも、極端な例ですが、目的のはっきりしない人員や資機材は、管理しようがないということです。災害対応は、繰り返しになりますが、複数の文化が異なる組織が集まり、1つの目的に沿って対応にあたることが求められます。

東日本大震災では、自衛隊、消防、警察、自治体、ボランティア組織など、災害直後から、多くの組織が、スタッフを現場に派遣し、数カ月後には現地からの引き上げが始まりました。全体を俯瞰すれば、災害対応に応じて、必要な人、資機材が必要な時期に投入されたと言えるかもしれませんが、現地に入り込んでみると、医療品が足りない状況が続いていたり、何か月も立って毛布類などがあまりはじめているのに毛布類が現場に届いたり、とまだまだ課題もあるように思いました。

必要な時に、必要な人・資機材をしっかり投入できるようにしておくということは、それだけ計画が緻密につくられていないと絶対に実現できません。そしてその計画が、関係者間で共有されなくてはならない。ですから、ICSでは災害発生後に災害対応計画(Incident Action Plan)をつくり、それを定期的に見直し、関係機関と情報共有を図りながら、必要な人員、資機材についても見直していくことを推奨しているのです。